アライグマはなぜ問題?特定外来生物としての扱いと自治体の防除

雑木林の水辺の石の上で、前足を石に触れているアライグマ1匹の写真 害獣駆除コラム

夜の屋根の上を、しま模様の尾を持つ動物が歩いていた。家庭菜園のトウモロコシが荒らされていた。そんなきっかけで調べ始める人の多いアライグマは、見た目の愛らしさとは裏腹に、日本では法律で特に厳しく扱われている動物です。

環境省の手引きと自治体の公開資料をもとに、見分け方から防除のしくみまでを整理します。

この記事でわかること

  • タヌキ・アナグマ・ハクビシンと見分けるポイント(尾・顔・足跡)
  • アライグマが住宅の屋根裏や壁の中に入り込んだときに起きること
  • 特定外来生物として禁じられている行為(飼う・運ぶ・譲る・放す)
  • 都道府県と市町村の防除のしくみと、住んでいる地域での相談のしかた

アライグマの見分け方|タヌキ・アナグマ・ハクビシンとの違い

アライグマは北米から中米が原産の中型の哺乳類です。環境省の手引きでは、頭胴長はおよそ40〜60cm、体重は2〜10数kgとされ、タヌキより一回り大きく、尾も長めです。夜行性で、木登りや泳ぎが得意です。

タヌキやアナグマ、ハクビシンと取り違えやすいため、手引きの見分け方を表にしました。

尾顔足跡・歩き方
アライグマ長く、黒いリング状のしま(4〜7本)目のまわりに大きな黒いマスク模様、眉間に黒い筋5本の指が分かれ、子どもの手形に似る
タヌキ短く、しまは無い全体に茶色っぽい花の模様のような跡
アナグマ短く太い。しまは無い鼻筋が白っぽいずんぐりして足が短い
ハクビシン長いが、しまは無い顔の中央に白い線体が細長く小さめ

出典:環境省「アライグマ防除の手引き」(令和7年3月改訂版)資料1(確認日 2026-10-24)

目印は「尾のしま」と「足跡」です。泥やベランダのほこりに手のひらのような跡があれば、写真に残しておくと相談のときに役立ちます。

家のまわりで起きる被害

本来は木のうろなどをねぐらにしますが、狭い隙間にも入り込めるため、住宅や倉庫の屋根裏、壁の隙間に住みつく例が多く報告されています。外壁と内壁のあいだで断熱材を巣の材料にしていた事例もあります。

  • 屋根裏や天井裏にふん尿がたまり、天井や柱が汚れる
  • 柱や壁に爪を立てて登り、爪あとが残る(寺社などの文化財でも報告がある)
  • 庭の果樹、トウモロコシやスイカなどの甘みのある作物が食べられる
  • カエルや鳥のひななど在来の生き物が食べられる

爪あとはハクビシンやネコでも似たものが残るため、足跡や姿と合わせて考えます。また環境省は、人と動物に共通する感染症の媒介者となるおそれがあるとしています。見かけても近づかず、エサも与えないことが基本です。

特定外来生物とは|アライグマが指定された理由

特定外来生物は、海外から持ち込まれた生き物のうち、生態系や人の身体、農林水産業に被害を及ぼすおそれがあるとして政令で定められたものです。根拠は外来生物法で、アライグマは2005年の法律の施行時にいち早く指定されました。

手引きによると、国内初の野生化の確認は1962年の愛知県です。1970年代後半にペットとして大量に輸入され、成長して飼いきれなくなった個体が捨てられたり逃げ出したりして定着が進みました。2024年の市町村アンケートでは、沖縄県を除く全都道府県で生息が確認されています。

外来生物法で禁じられていること

特定外来生物は、国の許可を受けた場合などを除き、次の行為が禁じられています。

条文禁じられていること
第4条飼養等(飼う、保管する、運搬する)
第7条輸入
第8条譲り渡す・譲り受ける、引き渡す・引き取る
第9条飼養等の施設の外へ放す

出典:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(e-Gov法令検索)(確認日 2026-10-24)

「弱った子どもを家で世話する」「車で山へ運んで逃がす」「知人に引き取ってもらう」は、善意でもこの規定にふれるおそれがあります。見つけたら自治体に連絡するのが筋道です。

自治体による防除のしくみ

2023年4月の改正で、都道府県は防除の区域・期間・方法などを公示して国に通知すれば、法律に基づく防除を行えるようになりました。市町村は国の確認を受けるか、都道府県の公示に名前が載ることで防除を行います。中身を具体化した「防除実施計画」をつくる自治体も多くあります。

手引きによれば、アライグマの防除は2024年11月時点で21都道府県・435市町村が実施しています。千葉県は第3次の防除実施計画で県内の野外からの完全排除を最終目標に掲げ、東京都も区市町村と連携して計画的に対策を進めています。

市区町村の対応の一例

東京都北区は、天井裏への侵入など被害が出ている場所で、委託業者による調査と箱わなの設置を行っています。所有者の同意と毎日の見回りが条件で、目撃しただけでは対象外です。清掃・消毒や侵入口の補修は所有者が担います。条件は自治体ごとに違うため、住んでいる市区町村のページで確かめてください。

鳥獣保護管理法との関係

アライグマは鳥獣保護管理法でも狩猟鳥獣に位置づけられています。手引きでは、捕獲の根拠は外来生物法の防除と鳥獣保護管理法の許可の2つで、いずれも決められた手続きの中で行うものとされています。わなにハクビシンなどがかかった場合の扱いにも同法の許可が関わります。

家でできる予防

基本は「エサ」と「隙間」を減らすことです。北区は住民ができる対策として次の点を挙げています。

  • 生ごみ、取り残した果実、ペットのエサを屋外に置かない。ごみ出しのルールを守る
  • 庭の果実は早めに収穫するか、網をかける
  • 屋根に向かってのびる木の枝をこまめに切る
  • 壁や軒下の穴、床下の通気口、換気口、戸袋の下などの隙間を金網などでふさぐ
  • 野生動物に触れたり、エサを与えたりしない

すでに屋根裏で物音がするなら、中に動物が残ったまま穴をふさぐと閉じ込めかねません。何の動物か、どこから出入りしているかを確かめてから順番を決めます。

相談するときの窓口

最初の窓口は、市区町村の環境・農林・鳥獣対策の担当課であることが多く、課の名前は自治体ごとに違います。相談の前に次のことをメモしておくと話が早く進みます。

  • 見た日時と場所(屋根の上、庭、物置など)
  • 姿の特徴(尾のしまの有無、顔の模様)と、足跡やふんの写真
  • 賃貸住宅の場合は、管理会社や大家さんにも同じ内容を伝える

相談自体は受け付けている自治体が多いものの、北区のように「目撃しただけ」は箱わなの設置の対象外としている例もあります。どこまで対応するかは自治体ごとに異なるので、住んでいる市区町村のページか窓口で確かめてください。

飼うことはできません。特定外来生物は、飼う・保管する・運ぶことが外来生物法で原則として禁じられています。かわいそうに思えても手を出さず、見つけた場所と様子を市区町村に伝えてください。

放してはいけません。施設の外に放すことも、生きたまま運ぶことも外来生物法の禁止の対象です。わなは自治体の防除などの手続きの中で使うものなので、その後の扱いも自治体や従事者の指示に従います。

まとめ

  • 見分けの目印は、黒いリング状のしまがある長い尾と、5本指の手形のような足跡
  • 屋根裏や壁の隙間に住みつき、ふん尿の汚れや爪あと、作物の食害を起こす
  • 外来生物法の特定外来生物で、飼う・運ぶ・譲る・放すことは原則禁止
  • 都道府県と市町村が防除実施計画などに基づいて防除を進めている
  • エサと隙間を減らし、何の動物か・どこから入ったかを確かめて自治体の窓口や専門の業者に相談する

参考にした資料

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