歯列矯正は医療費控除の対象?大人の矯正で認められる条件と申告のしかた

木目のデスクに領収書の束・クリアファイル・電卓・ボールペン・透明なマウスピースの入った無地のケースが並ぶ、医療費の書類整理をしている俯瞰写真 マウスピース矯正コラム

歯列矯正は自費になることが多く、まとまった金額を支払う年には、医療費控除に入れられるかが気になります。「見た目のための矯正は対象外」と聞いても、大人の矯正がどちらに当たるのかは分かりにくいところです。

この記事では、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と質疑応答事例(令和7年8月1日現在の法令・通達等)の原文をもとに、対象になる矯正とならない矯正の線引き、控除額の計算、デンタルローンや分割払いの扱い、申告の手順を整理します。個別の判断は、申告前に所轄の税務署へ確認してください。

この記事でわかること

  • 国税庁が示す、歯列矯正が医療費控除の対象になる場合・ならない場合
  • 控除額の計算式(10万円または所得の5%を超えた部分)
  • 一括・分割・デンタルローンで、どの年の控除になるか
  • セルフメディケーション税制との選び方と、申告に必要な書類

医療費控除のしくみ

医療費控除は、1月1日から12月31日までの1年間に、自分または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超えたとき、所得から差し引ける「所得控除」です(タックスアンサー No.1120)。生計を一にしていれば、親が払った子どもの矯正費も親の申告に含められます。

控除額は次の式で計算し、上限は200万円です。

計算式(その年に実際に支払った医療費の合計 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円
10万円の例外その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%
上限200万円

出典:国税庁 タックスアンサー No.1120(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 2026-10-19)

たとえば総所得金額等が400万円の人が、その年に矯正費を60万円支払い、ほかの医療費や補てんがなければ、60万円 − 10万円 = 50万円が控除額です(説明用の架空の例)。所得から差し引く仕組みなので、戻ってくる税金は控除額そのものではなく、その人の税率によって変わります。

歯列矯正が対象になるかの線引き

国税庁のタックスアンサー No.1128 は、歯列矯正について次のように示しています。

発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。しかし、同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は、医療費控除の対象になりません。

(国税庁 タックスアンサー No.1128 より)

質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」では、将来の就職や結婚を考慮しての歯列矯正は、一般的に容姿を美化し又は容貌を変えるためのものと認められ、対象にならないと回答されています。根拠として所得税法施行令第207条と所得税基本通達73-4が挙げられています。

区分国税庁の資料での扱い
対象になる例発育段階にある子どもの成長を妨げないための不正咬合の矯正など、年齢や目的からみて必要と認められる矯正
対象にならない例容ぼうを美化するための矯正。就職や結婚を考えての矯正は、一般的にこちらに当たるとされる

出典:国税庁 タックスアンサー No.1128、質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」(確認日 2026-10-19)

大人の矯正はどう考えるか

原文は年齢で区切っておらず、基準は「年齢や矯正の目的などからみて必要と認められるか」です。大人でも、かみ合わせの異常を治すなど治療として必要と認められれば、対象になりうると読めます。逆に、見た目を整えることが主な目的なら対象外です。

どちらに当たるかは、税務署が個別の事情をもとに判断します。医院で治療の目的を説明してもらい、迷うときは申告前に所轄の税務署へ相談しましょう。

自費の治療でも対象になるか

No.1128 は、保険のきかない自由診療や高価な材料で治療代が高額になる場合について、「一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なもの」は対象にならないとしています。一方で、金やポーセレンのように一般的に使われている材料なら対象になるとも示しています。自費というだけで対象外になるわけではありません。

通院費など、一緒に入れられる費用

  • 治療のための通院費(電車・バスなどの交通費)。通院日と金額を記録しておく
  • 小さな子どもの通院に付添いが必要なときの、付添人の交通費
  • 自家用車で通院したときのガソリン代や駐車場代は対象にならない

支払い方法ごとの扱い

どの年の控除になるかは、支払い方で変わります。

支払い方どの年の控除になるか
その年に一括で支払った支払った年
医院に直接、分割で支払った実際に支払った年ごと。治療が終わっていても、未払いの分はその年の対象にならない
デンタルローン(信販会社の立替払)信販会社が立替払をした年(ローン契約が成立した時)に、立替額が対象。金利・手数料は対象外
治療中に年が変わったそれぞれの年に支払った額が、各年分の対象

出典:国税庁 タックスアンサー No.1128、No.1120、質疑応答事例「未払の医療費」(確認日 2026-10-19)

デンタルローンを使うと、手もとに歯科医院の領収書がないことがあります。No.1128 は、その場合の支払いを証明する書類として、ローンの契約書や信販会社の領収書を保存するよう求めています。

セルフメディケーション税制との選択

市販薬の購入費を対象にしたセルフメディケーション税制は、通常の医療費控除の特例で、どちらか一方を選ぶ仕組みです(No.1129)。両方を同じ年に受けることはできず、選んだあとに更正の請求や修正申告で切り替えることもできません。

セルフメディケーション税制の控除額は、対象の市販薬の購入費から1万2,000円を引いた額で、上限は8万8,000円です。矯正費の支払いがある年は、両方で計算してから選びましょう。

申告のしかた

医療費控除は確定申告で受けます。領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作り、確定申告書に添えて提出します(No.1120)。医療費通知があれば明細書の記載を簡略化できます。

  • 医院の領収書(ローンなら契約書・信販会社の領収書)
  • 通院の日付と交通費の記録
  • 保険金などの補てんを受けた場合はその金額がわかる書類
  • 医療費通知(ある場合)と、給与所得者は源泉徴収票

領収書は提出しませんが、申告期限などから5年を経過する日まで、税務署から提示や提出を求められることがあるので保管しておきます。確定申告の義務がない人の還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます(No.2030)。

よくある質問

国税庁は年齢だけで線を引いておらず、年齢や目的からみて必要と認められる矯正は対象、容ぼうを美化するための矯正は対象外としています。自分のケースが当たるかは、申告前に税務署へ確認しましょう。

入れられません。タックスアンサー No.1128 は、ローンの金利および手数料相当分は対象外としています。対象になるのは信販会社が立て替えた治療費の分で、立替払をした年の医療費になります。

確定申告をする義務のない人の還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます(No.2030)。すでに申告済みの年分は手続きが異なるので、税務署に確認してください。

まとめ

  • 年齢や目的からみて必要と認められる矯正は対象、容ぼうを美化するための矯正は対象外(No.1128)
  • 大人でも治療として必要と認められれば対象になりうる。判断に迷うときは申告前に税務署へ
  • 控除額は(支払った医療費 − 補てん額)− 10万円(所得200万円未満は所得の5%)、上限200万円
  • デンタルローンは立替払をした年に対象、金利・手数料は対象外。分割払いは支払った年ごと
  • セルフメディケーション税制とはどちらか一方。領収書や契約書は5年間保管する

参考にした資料

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