離婚の財産分与で家はどう分ける?3つの分け方と評価額の決め方

木目のテーブルの中央に白い一軒家の模型がひとつあり、手前に書類が2枚、左右に少し離して置かれている俯瞰写真 離婚と住まいのコラム

預金なら金額を半分にすれば済みますが、家は切り分けられません。住宅ローンが残っていることも多く、そもそも家にいくらの値打ちがあるのかというところから意見が分かれがちです。

この記事では、民法の条文と家庭裁判所の公表資料をもとに、家の分け方の3つのやり方と「評価額」の決め方を整理します。

この記事でわかること

  • 財産分与のルールを定めた民法768条の中身
  • 家を分ける3つのやり方(売却・代償金・名義を移す)の違い
  • 評価額を決めるときに見る「時点」と「価格の資料」
  • 架空の数字で見る、分け方ごとの金額の動き

財産分与は民法768条で決まっている

民法768条1項は、協議離婚をした一方が相手に財産の分与を請求できると定めています。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を求められます(同条2項)。裁判離婚にも771条で準用されます。

2026年4月1日に施行された改正で、768条3項には家庭裁判所が考える事情が具体的に書き込まれました。婚姻中に取得・維持した財産の額、寄与の程度、婚姻の期間、年齢や収入などです。そして、財産を築いたり保ったりすることへの寄与は、程度が違うと明らかでない限り等しいものとして扱うと定められました。法務省のパンフレットは、家事や育児の分担も寄与に含まれるので原則2分の1ずつになると説明しています。

法務省は、財産分与の性質のうち、婚姻中に築いた財産の公平な分配が基本だとしています。家の扱いも、まずはこの「清算」の考え方で整理します。

家を分けるやり方は大きく3つ

条文に「家はこう分ける」という型はありません。768条3項は、家庭裁判所が分与の額だけでなく方法も定めるとし、家事事件手続法154条2項は、審判で金銭の支払や登記義務の履行などを命じられるとしています。話し合いでは、次の3つのどれか、または組み合わせになるのが一般的です。

やり方中身先に決めておきたいこと
売って代金を分ける家を売り、ローンの返済と売却費用を差し引いた残りを分け合う売り出す価格・時期、売れるまでの返済の負担
代償金を払って一方が持つ家を持ち続ける側が、相手の取り分に見合うお金を支払う家の評価額、代償金の額、一括か分割か、支払期限
名義を移して家そのものを渡す所有権を相手に移し、ほかの財産で釣り合いをとる所有権移転登記の時期、ローンの債務者をどうするか

出典:民法768条3項、家事事件手続法154条2項、法制審議会家族法制部会 資料9-2 をもとに作成(確認日 2026-10-19)

売って代金を分ける

お金に換えるので、評価額で揉めにくいのが特徴です。家庭裁判所の資料でも、基準時より後に売却したときは、その売却価格を評価額とするのが一般的とされています。どちらも住み続けられなくなる点は、引っ越し先とあわせて考える必要があります。

代償金を払って一方が持つ

法制審議会の資料では、夫婦の一方に財産を帰属させて他方に代償金を支払う方法が、分与のやり方の一つとして挙げられています。住み慣れた家を残せる反面、代償金の額は評価額でほぼ決まります。まとまった現金を用意できるかどうかも分かれ目です。

名義を移して家そのものを渡す

家の所有者を一方から他方へ移すやり方です。家の値打ちが取り分を上回るなら、預金など別の財産で差を埋めます。ローンが残っている場合、家の名義とローンの借り手は別の話で、後者は金融機関との手続きになります。

評価額は「いつ」の「どの価格」で決めるか

分ける数字は、家の評価額からローン残高を差し引いた額が基本です。迷いやすいのは、いつの時点の数字を使うかで、横浜・札幌の家庭裁判所の資料では次の扱いが一般的とされています。

  • どの財産を分けるかを決める「基準時」は、夫婦の経済的な協力が終わった時点で、多くは別居した日
  • 家の評価は、離婚時や現時点の時価で見るのが一般的
  • 住宅ローンは、基準時の残高で見るのが一般的

ローン残高は別居時、家の値段は今、という組み合わせになることがあります。資料ごとに日付をメモしておくと、話がかみ合いやすくなります。

価格の手がかりになる資料

資料誰が・何のために押さえておきたい点
不動産会社の査定不動産会社が、売れる見込みの価格を示す会社によって幅が出る。家庭裁判所の資料では、価額はまず業者の査定等で示すのが一般的とされる
固定資産税評価額市町村が固定資産税を計算するために決める宅地は地価公示価格等の7割を目途に評価。3年ごとに評価替え
相続税路線価国税局が相続税・贈与税の計算のために定める1月1日時点で、地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途
不動産鑑定士の鑑定評価不動産鑑定士が経済価値を判定し、価額で示す費用はかかるが、判断の根拠が書面で示される

出典:総務省「固定資産税の概要」、国税庁「令和8年分の路線価等について」、不動産の鑑定評価に関する法律2条・3条、横浜家庭裁判所「財産分与の審理について」(確認日 2026-10-19)

固定資産税評価額や路線価は税金の物差しで、売買の値段そのものではありません。財産分与の調停では固定資産評価証明書が標準的な添付書類ですが、札幌家裁の資料には、それと異なる価額を主張するなら査定書を出すよう書かれています。周りでどんな値段で取引されているかは、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。

架空の数字で分け方ごとに比べる

例:家の評価額3,000万円、基準時のローン残高2,000万円、ほかに分ける財産はなく、取り分は2分の1ずつとします。数字はすべて計算の流れを示すための架空のものです。

やり方(例)計算相手が受け取る額
売って分ける3,000万円で売れ、売却の費用が100万円かかったと仮定。3,000万−2,000万−100万=900万円を半分に450万円
代償金を払う3,000万−2,000万=1,000万円を半分に。家を持つ側がローンを払い続ける前提500万円
名義を移す家を受け取る側が評価額の半分を超えて得る分を、別の財産やお金で調整(調整しだい)

※すべて架空の例です。税金や登記の費用は含めていません。実際の金額は家・契約・取り決めによって変わります。

同じ家でも、売却の費用を差し引くかどうかで受け取る額が変わります。何を差し引くのかを先に言葉で合わせておくと、数字の食い違いが起きにくくなります。売却や名義の移転には税金がかかる場面もあります。

話し合いの前にそろえておきたいこと

  • 登記事項証明書(名義と持分)
  • 評価額の資料と、その数字の時点
  • 住宅ローンの残高証明書や償還予定表
  • 候補にするやり方と、代償金の額・支払期限

決まったことは書面に残し、あいまいなまま名義やお金を動かさないようにしましょう。条文の当てはめ方に迷ったら弁護士に、登記は司法書士に、税金は税務署に確かめてください。

よくある質問

法律で決まった答えはなく、話し合いなら、どの数字を使うかを2人で合意します。折り合わない場合は、不動産鑑定士の鑑定を使うことも考えられます。

家庭裁判所の資料では、分ける財産を決める基準時は一般的に別居時、家の評価は離婚時や現時点の時価で見るのが一般的とされています。基準時のあとの大きな変動は「一切の事情」として考慮されることがあるとも書かれており、事情によって変わります。

768条3項の「寄与は原則として等しい」は家庭裁判所が判断するときのルールで、話し合いでは事情に応じた割合で合意することもあります。迷う点は弁護士に相談してください。

まとめ

  • 財産分与は民法768条が根拠。2026年4月施行の改正で、寄与は原則として等しいと明記された
  • 家の分け方は、売って分ける・代償金を払う・名義を移すの3つが基本
  • 分ける対象は別居時が基準、家の値段は現時点の時価で見るのが一般的
  • 固定資産税評価額や路線価は税の物差し。査定や鑑定と目的が違う
  • 評価額の根拠と時点をそろえ、決めたことは書面に残す

参考にした資料

タイトルとURLをコピーしました