財産分与の請求期限と、話し合いで決まらないとき|調停・審判の流れ

白いデスクの上に、日付や数字が読めない程度に卓上カレンダーと書類、ボールペン、小さな砂時計が並ぶ写真 離婚と住まいのコラム

離婚のときは気持ちの整理がつかず、家や預金の分け方を後回しにすることも珍しくありません。ただ、財産分与を家庭裁判所に求められる期間には法律で区切りがあり、その長さは2026年4月1日に変わりました。いつ離婚したかによって、当てはまる期間が違います。

この記事では、民法と改正法の附則、法務省と裁判所の案内をもとに、財産分与を請求できる期間と、話し合いで決まらないときに使う家庭裁判所の調停・審判の流れを整理します。

この記事でわかること

  • 家庭裁判所に財産分与を求められる期間(離婚した日による違い)
  • 2026年4月1日施行の改正でほかに変わった点
  • 離婚前と離婚後で使う調停の違い
  • 財産分与請求調停の申立先・必要書類・費用と、審判に移るまでの流れ

家庭裁判所に求められる期間は「離婚の時から5年」

財産分与は、まず夫婦の協議で決めます。協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所に「協議に代わる処分」を請求できます(民法768条2項)。この請求には期間の制限があり、現在の条文は離婚の時から5年を経過したときは請求できないと定めています。よく「財産分与の時効」と呼ばれるのは、この期間のことです。

以前はこの期間が2年でした。2024年5月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)で5年に延び、施行日は2025年10月31日の閣議決定で2026年4月1日と決まりました。

2026年3月31日までに離婚した人は2年のまま

注意したいのは、5年が全員に当てはまるわけではない点です。改正法の附則4条は、施行日前に離婚した場合の請求期間の制限について「なお従前の例による」と定めています。法務省の解説資料も、施行前(2026年3月31日以前)に離婚した夫婦が請求できる期間は離婚後2年だとしています。

離婚した日家庭裁判所に申し立てられなくなる時期
2026年3月31日以前離婚した日の翌日から起算して2年を経過したとき
2026年4月1日以後離婚した日の翌日から起算して5年を経過したとき

出典:裁判所「財産分与請求調停」、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)附則第4条(確認日 2026-10-19)

例:2025年12月に協議離婚した人は、改正前の2年が当てはまり、期限は2027年12月ごろです。2026年5月に離婚した人なら、5年後の2031年5月ごろまでとなります(いずれも架空の例です。正確な期限は離婚した日から数えて確かめてください)。

この期間は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる期限です。話し合いを続けているうちに期限が近づいている場合は、先に申立てができるかどうかを家庭裁判所に確かめておきましょう。

改正でほかに変わったこと

同じ改正で、財産分与で考える事情も条文に書き込まれました。家庭裁判所は、婚姻中に取得・維持した財産の額、それぞれの寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、協力・扶助の状況、各自の年齢・心身の状況・職業・収入などを考えます(民法768条3項)。寄与の程度は、違いが明らかでなければ等しいものとされます。

手続き面では、家庭裁判所が財産分与の審判や調停で、当事者に財産の状況についての情報の開示を命じられるようになりました(家事事件手続法152条の2第2項・258条3項)。正当な理由なく開示しなかったり、偽りの情報を出したりすると、10万円以下の過料の対象になります。

離婚前か離婚後かで使う調停が変わる

家庭裁判所の手続きは、離婚がすでに成立しているかどうかで入り口が分かれます。

離婚前離婚後
使う手続き夫婦関係調整調停(離婚)財産分与請求調停(または審判)
話し合う範囲離婚そのものに加え、財産分与・年金分割・慰謝料・子どものことも一緒に話し合える財産分与
申し立てる人夫または妻離婚した元夫または元妻
申立先相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
費用収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なる)

出典:裁判所「財産分与請求調停」「夫婦関係調整調停(離婚)」(確認日 2026-10-19)

離婚前に家の扱いまで決めたいなら、離婚の調停のなかで財産分与もあわせて話し合えます。離婚だけ先に成立させた場合は、期間内に財産分与請求調停を申し立てる形になります。

財産分与請求調停の申立てに必要な書類

裁判所の案内では、申立書とその写し1通のほか、次の書類が標準的な添付書類とされています。申立書の書式と記載例は裁判所のウェブサイトに掲載されています。

  • 離婚時の夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)。離婚で一方が除籍された記載のあるもの
  • 夫婦の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書など)
  • 事情説明書(財産分与)
  • 進行に関する照会回答書
  • 送達場所等届出書

家については、登記事項証明書と固定資産評価証明書が財産の資料にあたります。審理に必要な場合は追加の書類を求められることもあります。郵便料は、保管金として電子納付することも、切手で納めることもできます。

調停の進み方と、まとまらないときの審判

調停は、裁判官1名と調停委員2名以上でつくる調停委員会が、双方から話を聞きながら合意を目指す手続きです。話しやすいように双方から別々に話を聞くこともあり、事情によってはウェブ会議が使われる場合もあります。弁護士に依頼しなくても手続きはできます。

段階内容
1. 申立て申立書と添付書類、収入印紙・郵便切手を家庭裁判所に出す
2. 調停期日財産の内容などを双方から確認し、資料の提出を受けながら解決案の提示や助言が行われる
3. 調停成立合意を調書に記載すると成立。その記載は確定した審判と同じ効力をもつ(家事事件手続法268条1項)
4. 不成立なら審判調停の申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続に移る(同法272条4項)
5. 審判裁判官が民法768条3項の事情を考えて、分与するか、額と方法を判断する。不服があれば即時抗告ができる

出典:裁判所「財産分与請求調停」「家事事件Q&A」、e-Gov法令検索「家事事件手続法」(確認日 2026-10-19)

調停や審判で決まったことが守られない場合は、家庭裁判所の履行勧告の手続きを使えます。家の引き渡しや登記のように、決まった中身をどう実現するかは事情によって変わるため、弁護士に確認してください。

どの手続きを使えばよいか分からないときは、家庭裁判所の「家事手続案内」で、手続きの流れや必要な費用・書類の説明を受けられます。1件おおむね20分以内が目安で、受付時間は裁判所ごとに異なります。「いくらもらえるか」といった法律相談には応じていないので、個別の判断は弁護士に相談しましょう。

よくある質問

なりません。改正法の附則4条により、2026年4月1日より前に離婚した場合は従前の例によるため、家庭裁判所に申し立てられるのは離婚した日の翌日から起算して2年以内です。

裁判所は、弁護士に依頼していなくても調停の手続きを行うことができると案内しています。手続きの流れや書類については、家庭裁判所の家事手続案内で説明を受けられます。

話し合えます。夫婦関係調整調停(離婚)では、離婚そのものだけでなく、財産分与や年金分割、慰謝料など財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。

まとめ

  • 家庭裁判所への財産分与の請求は、離婚の時から5年を過ぎるとできない(民法768条2項)
  • 2026年3月31日以前に離婚した人は、改正前と同じ2年が当てはまる(改正法附則4条)
  • 離婚前は夫婦関係調整調停のなかで、離婚後は財産分与請求調停で話し合う
  • 申立ての費用は収入印紙1,200円分と郵便切手。調停が不成立なら審判に移る
  • 期限と手続きは家庭裁判所で確かめ、個別の判断は弁護士に相談する

参考にした資料

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