夫婦で家を買ったとき、住宅ローンを「2人で組んだ」と覚えていても、契約の中身は家庭ごとに違います。2本のローンを別々に借りたのか、1本のローンを2人で借りたのか、片方が借りてもう片方が保証したのか。離婚のあとにどんな責任が残るかは、この契約の形で決まります。
この記事では、3つの形の違いを民法の条文をもとに整理し、手元の書類で自分の形を確かめる方法をまとめます。
夫婦で組む住宅ローンは大きく3つの形に分かれる
夫婦が2人の収入で家を買うときの契約の形は、主に次の3つです。借入れが何本あるかと、それぞれの借入れで誰がどの立場にいるかで区別できます。
| 形 | 借入れの本数 | 契約での立場 | 負う責任の範囲 |
|---|---|---|---|
| ペアローン | 2本 | 夫と妻がそれぞれ自分の借入れの債務者になる | 自分の借入れの返済。相手の借入れを保証していれば、その保証の責任も負う |
| 連帯債務 | 1本 | 2人とも債務者になる | 2人それぞれが、借入れの全額について請求を受けうる |
| 連帯保証 | 1本 | 1人が債務者、もう1人が連帯保証人になる | 債務者が支払わないとき、保証人が代わりに支払う |
出典:民法第436条・第446条・第454条、住宅金融支援機構「ペアローンの概要」をもとに作成
ペアローン:1つの家に、2本の別々のローン
ペアローンは、1つの住宅について夫と妻がそれぞれ申し込み、2本のローンを別々に借りる形です。住宅金融支援機構の【フラット35】のペアローンでは、2つの融資それぞれについて、住宅と敷地の全体に同じ順位の抵当権を設定すると案内されています。借入れは2本に分かれていても、担保になっているのは家の全体です。
返済の義務は自分が借りた分ですが、契約によっては相手の借入れの保証人を兼ねていることがあります。保証の書面に署名していないかを確かめておきましょう。
連帯債務:1本のローンを、2人がそれぞれ全額について負う
連帯債務は、1本のローンを2人がともに債務者として借りる形です。民法第436条は、連帯債務のとき、債権者は連帯債務者の1人に対しても、全員に対しても、全部または一部の履行を請求できると定めています。「半分ずつ借りた」つもりでも、金融機関から見ればどちらにも全額を求められる関係です。
夫婦の間ではそれぞれに負担部分があり、それを超えて支払った人は相手にその分を求められます(民法第442条)。なお【フラット35】では、収入を合算する人は連帯債務者になることが要件の1つとされています。
連帯保証:借りるのは1人、もう1人は保証人
連帯保証は、ローンの債務者は1人で、もう1人が保証人として加わる形です。保証人は、債務者が支払わないときに代わって支払う責任を負います(民法第446条第1項)。保証契約は書面でしなければ効力を生じないとされているので(同条第2項)、保証をしているなら署名した書面があるはずです。
ふつうの保証人には、先に債務者へ催促するよう求める権利や、債務者の財産から先に取り立てるよう求める権利があります(民法第452条・第453条)。連帯保証人には、この2つの権利が認められていません(民法第454条)。
自分の契約の形は、2つの書類で見分けられる
見るのは、金融機関と取り交わした契約書と、法務局で取れる登記事項証明書の2つです。
ローン契約書(金銭消費貸借契約書)で見るところ
契約書には、署名した人がどの立場で名を連ねているかが書かれています。書式は金融機関ごとに違いますが、次の点を見ます。
- 契約書が1通か2通か、借入額がいくらずつ書かれているか
- 署名欄の肩書が「債務者」「連帯債務者」「連帯保証人」のどれになっているか
- 相手の借入れについて、自分が保証人として署名していないか
- 団体信用生命保険に、誰が加入しているか
契約書が見当たらないときは、自分がどの立場で契約しているのかを借入先に問い合わせてみましょう。
登記事項証明書で見るところ
登記事項証明書は、法務局で誰でも交付を請求できる書類です(不動産登記法第119条)。法務省の説明によると、権利部の甲区には所有者に関する事項が、乙区には抵当権など所有権以外の権利に関する事項が記録されます。
甲区を見ると、家の名義人が誰か、共有ならそれぞれの持分がわかります。乙区の抵当権の記録には、債権額と債務者の氏名・住所が載ります(不動産登記法第83条)。抵当権の記録が2件あって債務者がそれぞれ別ならペアローン、1件の抵当権に2人が債務者として載っていれば連帯債務の可能性が高いと読めます。
離婚しても、返済や保証の責任はそのまま残る
住宅ローンは、借りた人と金融機関とのあいだの契約です。離婚や財産分与の話し合いは夫婦のあいだのことなので、それだけで金融機関との契約の当事者が入れ替わることはありません。
民法は、借金を別の人が引き受けて元の債務者が抜ける方法(免責的債務引受)について、債権者と引き受ける人との契約、または債権者の承諾が要ると定めています(民法第472条)。住宅ローンでいえば、返す人を入れ替えたり、どちらかを契約から外したりするには、金融機関が応じることが前提です。保証契約も相手は金融機関なので、保証人をやめるときも同じです。
夫婦の間で「返済は住む側が続ける」と決めることはできますが、それは2人の間の約束です。金融機関に対する責任の形まで変えるものではないという点を、話し合いの前提にしておきましょう。
責任の形を変えたいときに、最初に確かめること
2本の借入れを1本にまとめたい、連帯債務や保証から抜けたいと考えたとき、どの方法が取れるかは金融機関の判断と、その時点の残高・収入で変わります。相談の前に、次のことをそろえておきます。
- 自分と相手の立場(債務者・連帯債務者・連帯保証人)と、借入れの本数
- それぞれの借入れの、いまの残高(残高証明書や返済予定表)
- 家の名義と持分(登記事項証明書の甲区)
- 離婚後に誰が住み、誰が返済を続ける予定か
立場と数字を書面でそろえたうえで借入先の金融機関に相談すると、話が具体的になります。夫婦の取り決めや財産分与との関係で迷うときは、弁護士や司法書士に確認してください。
よくある質問
借入れは2本に分かれていますが、契約によっては相手の借入れの保証人になっていることがあります。また、家の全体が両方の借入れの担保になっている場合、相手の返済が止まると家そのものに影響が及ぶことがあります。保証の有無はローン契約書で確かめてください。
協議書は夫婦の間の約束なので、金融機関に対する連帯債務はそのまま残ります。契約から外れるには、金融機関が債務者の変更などに応じることが必要です。
あります。家の名義とローンの債務者・保証人は別々に決まるため、名義のない人が連帯債務者や連帯保証人になっていることがあります。登記事項証明書の甲区・乙区と、ローン契約書をあわせて確かめてください。
まとめ
参考にした資料
- e-Gov法令検索「民法」(第436条・第442条・第446条・第452条〜第454条・第472条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(確認日 2026-10-19) - e-Gov法令検索「不動産登記法」(第59条・第83条・第119条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123(確認日 2026-10-19) - 法務省「不動産登記のABC」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji02.html(確認日 2026-10-19) - 住宅金融支援機構「ペアローンの概要|【フラット35】」
https://www.flat35.com/loan/lineup/pair/conditions.html(確認日 2026-10-19) - 住宅金融支援機構「収入合算|【フラット35】」
https://www.flat35.com/loan/lineup/gassan/index.html(確認日 2026-10-19)
