離婚後も家に住み続けるには?名義人と住む人が違うときに起きること

明るいリビングの窓辺にソファと観葉植物があり、やわらかい朝の光が差し込む室内の写真 離婚と住まいのコラム

離婚のあと、子どもの学校や仕事の都合で、いまの家にそのまま住み続けたいと考えることがあります。このとき、家の名義を持つ人やローンを返している人と、実際に暮らす人が別々になることがあります。

住む人と名義人が違う状態は、すぐに困りごとが起きるとは限りませんが、名義人の事情が変わると住まいに影響が及びます。この記事では、起こりうる場面を民法と住宅ローンの資料から整理し、書面に残しておきたいことをまとめます。

この記事でわかること

  • 家の「名義」「ローン」「住む人」がそれぞれ別に決まっていること
  • 名義人の返済が止まったとき、売りたくなったときに起きること
  • 住宅ローンの「本人や親族が住む」という条件と、離婚後の扱い
  • 住宅ローン控除への影響と、書面に残しておきたい取り決め

家には「名義」「ローン」「住む人」の3つの立場がある

1つの家には、登記上の所有者(名義人)、住宅ローンの債務者、そこで暮らす人という3つの立場があります。夫婦で暮らしていた間はこれが1つの世帯にそろっていましたが、離婚後に片方だけが住み続けると、暮らしている人が名義もローンも持っていないという状態が生まれます。

民法第206条は、所有者は法令の範囲内で、物を自由に使用・収益・処分できると定めています。名義のない人がその家に住めるのは、所有者との約束があるからです。その約束の中身が、この先の暮らしの安定を左右します。

起こりうる場面住む人から見て起きること確かめる資料
名義人の返済が止まった金融機関が抵当権を実行し、家が競売にかけられることがある民法第369条、民事執行法第180条
名義人が家を売りたくなった住み続けられるかは、住む約束の種類で変わる民法第593条〜第601条、借地借家法第31条
ローンが居住を条件にしている条件に合わない使い方と扱われることがあるローン契約書、住宅金融支援機構の案内

出典:e-Gov法令検索(民法・民事執行法・借地借家法)、住宅金融支援機構の資料をもとに作成

名義人の返済が止まったとき

住宅ローンを借りた家には、ふつう金融機関の抵当権が付いています。抵当権を持つ人は、その不動産からほかの債権者より先に弁済を受けられます(民法第369条)。返済が続かなくなると、金融機関は担保不動産競売などの方法で抵当権を実行できます(民事執行法第180条)。

住んでいる人がローンの契約者でなければ、金融機関とのやりとりは名義人との間で行われるため、返済が遅れていることに気づきにくい立場にあります。返済の状況をどう伝え合うかを、あらかじめ決めておくことが大切です。

名義人の代わりに住む人が返済を続ける、という取り決めをする家庭もあります。その場合も、金融機関との契約の当事者は名義人のままです。お金の扱いや名義の行方まで決めておかないと、後で食い違いが起きることがあります。

名義人が家を売りたくなったとき

名義人が家を手放したいと考える時期が来たとき、住み続けられるかどうかは、どんな約束で住んでいるかによって変わります。

無償で住む約束(使用貸借)の場合

家賃を払わずに住まわせてもらう約束は、民法の使用貸借にあたります(第593条)。期間を決めていればその期間が満ちたとき、使う目的を決めていればその目的に沿った使用を終えたときに終わるのが原則です(第597条)。期間も目的も決めていない場合、貸主はいつでも契約を解除できると定められています(第598条第2項)。

賃料を払って借りる約束(賃貸借)の場合

賃料を払って借りる約束は賃貸借です(民法第601条)。建物の賃貸借は、登記がなくても建物の引渡しを受けていれば、その後に建物を取得した人に対しても効力が生じます(借地借家法第31条)。ただし、ローンの抵当権が先に付いている家では、競売になったときの扱いが別に定められているため(民法第395条)、これだけで住まいが守られるとは言い切れません。

どちらの形にするかは財産分与などの話し合いとも関わるため、決める段階で弁護士に相談しておくと食い違いを防ぎやすくなります。

住宅ローンが「誰が住むか」を条件にしていることがある

住宅金融支援機構の【フラット35】は、利用条件で融資の対象を、申込み本人またはその親族が住む住宅の取得資金としています。そのうえで住んでいる状況を定期的に確かめており、第三者への賃貸など投資用の利用や目的外の利用がわかった場合は、借入れの全額を一括で返済することになると案内しています。

離婚して名義人が家を出て、元の配偶者と子どもが住み続ける場合、この条件にどう当てはまるかは契約の内容によります。民法では、親族の範囲を6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族と定め(第725条)、姻族関係は離婚によって終わるとしています(第728条)。元配偶者が契約でいう「親族」にあたるか、子どもが住んでいることがどう扱われるかは、自分で判断せず、借入先の金融機関に確かめることが欠かせません。

【フラット35】では、住所が変わったときは返済中の金融機関に届け出るよう求めています。民間の住宅ローンでも、居住や使い方についての定めがないか、契約書を読み直しておきましょう。

住宅ローン控除への影響

国税庁の案内では、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けるには、控除を受ける年の12月31日まで引き続きその家に住んでいることが要件の1つです。転勤などやむを得ない事情で所有者が家族と別に暮らす場合は、生計を一にする親族が住み続け、事情が解消したあと所有者も一緒に住むと認められるなどの条件を満たせば、住み続けているものとして扱われます。この扱いは、事情が解消したあと所有者が家族と一緒にその家に住むと認められることが条件です。離婚で名義人が家を出て戻る予定がなければこの条件に当たりにくく、名義人の控除は続かない可能性が高いため、控除を受けている人は所轄の税務署に確かめてください。【フラット35】の案内も、家族全員が住めない場合は控除の対象外になるとしています。

取り決めは書面に残しておく

名義人と住む人が違う形を選ぶなら、口約束にせず、離婚の話し合いの中で書面に残しておくことが大切です。住み続ける場合に話し合っておきたい項目は次のとおりです。

  • 誰が、いつまで住むのか(期間や、子どもの進学までといった目的)
  • 無償で住むのか、賃料を払うのか。払うならその額と払い方
  • 毎月の返済を誰が続けるのか。遅れたときにどう知らせ合うのか
  • 固定資産税や修繕の費用をどちらが負担するのか
  • 名義人が売りたくなったとき、どれくらい前に相談するのか
  • 住むのをやめるときや、名義を移すときの段取り

金融機関の条件に関わる部分は、取り決めの前に借入先へ確かめておくと、書いた内容が契約と食い違うのを避けられます。迷うところは弁護士・司法書士に、税金のことは税務署に相談しましょう。

よくある質問

夫婦の間でそう取り決めることはできますが、金融機関との契約の当事者は名義人のままです。払ったお金をどう扱うか、将来の名義をどうするかまで書面で決めておくと、後の食い違いを防げます。ローン契約上の扱いは借入先に確かめてください。

所有者は法令の範囲内で家を処分できるため、売却の話が出ることは考えられます。住み続けられるかは、無償で住む約束か賃料を払う約束かなどで変わります。売る前に相談する期間などを、あらかじめ書面で決めておくと備えになります。

名義人が家を出て住所が変わるなら、届け出を求められることがあります。【フラット35】では、住所が変わったときは返済中の金融機関に届け出るよう求めています。契約の条件との関係もあわせて確かめてください。

まとめ

  • 名義人・ローンの債務者・住む人は別々の立場で、離婚後に分かれることがある
  • 名義人の返済が止まると、抵当権が実行され家が競売にかけられることがある
  • 名義人が売りたくなったとき、住み続けられるかは住む約束の種類で変わる
  • 本人や親族が住むことを条件にする住宅ローンもあるので、扱いは借入先に確かめる
  • 住む期間・費用・返済・売るときの段取りは、話し合いの段階で書面に残す

参考にした資料

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